あの頃に戻ることはできない。
あの人達とはもう会えない・・。
・
・
少年時代が僕にもあった。
楽しい思い出はたくさんあるはずなのに、
思い出すのは・・
悲しいことのほうが多い。
忙しい日々がそうさせるのか?
どうしてなのかは、
自分でも分からない・・。
けれど
この日の僕はいつもと違って、楽しいことばかり思い出した。
先月、カヌーツーリングに行った。
少年時代の楽しい記憶が、次々と蘇ってくる。
おじさん達に連れられて、宮川で泳いだこと。
薄く削れた小石を拾い、川へ投げた、水切り遊び。
みんなで競った。
普段あまり笑わない大人たちが、 笑顔ではしゃいでいたことを・・
思い出した。
幼い頃の僕に、「川で泳ぐ」という発想はない。
「泳ぐ」=「プール」だった。
自然。
学校の授業では自然の大切さを説かれていたし、テレビでも見て、知っているつもりだった。
おじさん達が見せたものは、
僕の知らない世界・・・。
薄汚れた川しか知らない僕に、 本物を教えてくれた。
やさしく語りかけてくれた・・。
・
・
今回のツーリングに参加した子供は4人。
この子たちに、僕は本物を教えることができただろうか?
いや、
僕が、「教える」という言葉を使うのはおかしい。
宮川へ一緒に行き、見てもらうだけでいいのだ。
君たちの眼には・・
何が映っているのだろうか?
君たちに・・
お願いがある・・。
これからは、 僕のことを『Takaさん』と呼ぶか・・
『カヌーのお兄さん』
と呼んでほしい・・。
彼らへ、そんな風に・・
やさしく語りかけてあげたい・・。
・
・
あの頃に戻ることはできない。
あの人達とはもう会えない・・。
けれど
思い出を・・
つなぐことはできる・・・。
記者: 伊勢育ちTaka